お酒のない居酒屋にて
どうやら私たちは
コロナと戦っているわけではなく
コロナに右往左往して繰り出される
正気を失った対策と戦っているのらしい。
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どうやら私たちは
コロナと戦っているわけではなく
コロナに右往左往して繰り出される
正気を失った対策と戦っているのらしい。
2016年3月にキース・エマーソンが亡くなってから早くも5年が経つ。その年の5月にロサンジェルスで行われた追悼コンサートについてはYouTubeなどで断片的に見聞きしていたが、この度その全貌が The Official Keith Emerson Tribute Concert《Fanfare for the Uncommon Man》としてDVD化された。
晩年共にバンドを組んでいたマーク・ボニーラ(vo,G)ほかのメンバーを中心に、多くのミュージシャンが結集して「庶民のファンファーレ」「タルカス」「未開人」「ナットロッカー」「悪の教典」「タッチ&ゴー」などなどEL&Pの名作を網羅し、最後に「Are You Ready, Eddy?」で締めくくるというなかなか豪華で洒落たコンサートだ。
アルバムタイトルは「庶民のファンファーレ」にちなんで《Uncommon Man(非凡なる男)のためのファンファーレ》だが、ジャケットは「タルカス」!(ヘビーメタルみたいなドスの利いたイラストが凄い)。コンサート後半には全曲が5人編成で演奏されていてなかなか聴き応えがある。
初登場した50年前は超絶難曲だったが、私がオーケストラ版を試みたように、若い世代のミュージシャンたちが「古典(クラシック)」として普通に演奏しているのが感慨深い。
コンサートに当の本人が居ないというのはなんとも悲しいが、こうして新しい演奏で(クラシック音楽のように)後世に伝えられて行くのもある意味では歴史の趨勢なのかも知れない。(ただ、彼の演奏のあの熱気と衝撃は再現しようにも出来ないだろうけれど)
それにしても、もう5年…。亡くなる3年前(2013年)私の還暦コンサートに来てくれて、一緒にオーケストラ版「タルカス」を聴き、そのあと満員の聴衆の熱狂的な拍手を受けて二人でステージに上がったことが夢のようだ。
4月23/24日〈朱鷺によせる哀歌〉
尾高忠明指揮大阪フィル@大阪
5月8日〈サイバーバード協奏曲〉
sax:上野耕平/名古屋国際音楽祭ガラ・コンサート
5月15日:マリンバ協奏曲〈バードリズミクス〉
mb:三村奈々恵/日本センチュリー交響楽団@大阪
5月29日:〈アトムハーツクラブ組曲〉
原田慶太楼指揮オーケストラアンサンブル金沢
8月9日:交響曲第2番〈地球にて〉(4楽章完全版)
原田慶太楼指揮新日本フィル
・・・と、大阪、名古屋、金沢、東京での拙作演奏のお知らせが届く。
ここ数年すっかり音楽から離れた生活なので、長らく顔を見ていない息子や娘からの元気な便りを伝え聞くようで懐かしい。長女〈朱鷺〉は41歳、次男〈大地〉が30歳〈電鳥〉は27歳、一番若い〈木鳥〉が11歳。・・・歳を取るわけだ(笑
長らくADSLだった実家に(遅まきながら)ようやく光回線がやって来た。
もといた仕事場のマンションは光回線だったので、特にびっくりするような変化というわけではないが、PC経由で見る4K高画質の画像はやはり美しい。観光地をぶらぶら歩いたり自然の風景をドローン撮影したりするというような何の変哲もない動画にひたすら見入ってしまう。
ただ、老眼で現実世界はどんどん見え辛くなっているのに、PCの画面でここまで鮮明な景色が見られるというのは、脳にとって良いのだろうか?それとも悪いのだろうか?(それに、これに慣れてしまうと標準画質の映像がピンボケに見えてくるのも気になる)
とは言え、旅どころか外出もままならない薄暗闇の時代に差した一条の光…であることは確か。技術の進歩に感謝。
大きな仕事がいきなり消えてヒマになったので、昔懐かしの黒澤映画4本「七人の侍」「隠し砦の三悪人」「用心棒」「椿三十郎」をぶっ通しで見る。
黒澤映画は、欧米では古典として映画学校などで普通にビデオ鑑賞できていたのに、当の日本では(版権のせいか)長らく販売されていなかった。私も若い頃、友人が手に入れた海外版のVHSテープ(英語字幕付)を超貴重品として見せて貰った記憶があるが(ちなみに海賊版ではない。念のため)、日本で普通に全作品を見られるようになったのは1990年代くらいからだろうか。以後はVHS・LD・DVDと全集を買い漁り、最新版はiTunesのムービー。いつでも何処でも何度でも見られるのだから凄い時代になったものだ。
個人的に好きなのは、50/60年代の三船敏郎が主役の時代もの。白黒だし画質は荒いが「娯楽」に徹した(とにかく見ていて笑いが絶えない)究極の映画を堪能できる。それに昔の日本人の泥臭くも精悍な顔つきや風景や服装の汚れっぷりもいい。ただ、日本的な時代劇とはかなり違って、世界観は大らかで大陸的だし、三船敏郎演じる武士も禁欲的な「武士道」というよりは「遊びをせんとや生まれけむ」的な自由人(しかも差別主義ゼロのフェミニスト)。金にも女にも名誉にも武道にも興味を示さない彼の行動原理は良く分からないが、そんなことを遥かに超越して格好良くかつ面白い。
音楽としては、「七人の侍」での早坂文雄の仕事が有名だが、「隠し砦の三悪人」と「用心棒」での佐藤勝の色彩的でコミカルな音楽センスもかなり秀逸だ。時代劇なのにテーマはメジャーコードが鳴り響くビッグバンドジャズだったり、細かい断片的なフレーズで俳優の動きのコミカルさを強調したり、チェンバロとチャンチキというとんでもない組み合わせで遊女達の踊りを彩ったり。(そう言えば、昔NYで上演する和製ミュージカルの音楽を頼まれた時、「用心棒の音楽みたいなのを」と言われたことがある)。このセンスは監督の指示だったのかあるいは佐藤氏の考案だったのだろうか。その派手さ大仰さは長身肉食で有名な黒澤監督ならではで、お茶漬けと菜食のつつましい生活からは生まれ得ないようなダイナミズムに溢れている。
もうひとつ興味深いのは脚本で、黒澤監督ひとりで唯我独尊的に仕上げるのではなく、橋本忍や菊島隆三といった仲間達とアイデアを出しあい侃々諤々の議論の末に(いわゆるブレインストーミング的なやり方で)仕上げる共作だったのだそう。絶対逃げられない状況…というのを誰かが思い付き、そこから逃げ出す方法をみんなで考える…というような(ある意味で社会主義的な)共作の形というのは、ベートーヴェン的な個人芸術の形ではなくどこかロックバンド的な(こういうやり方で交響曲が書けないものかと思ったこともある)作り方で、ある意味で理想的な新しい形のような気がしないでもない。
それにしても、4作続けて見てしみじみ感じるのは、三船敏郎という人の凄さ。精悍で凜々しいだけでなく汚れ役もおどけた役も出来、無敵の剣豪として殺気を帯びた眼光を放ちながら子供や女性を相手におどけて笑わせる無害さと人懐っこさも出せる(並び立てるのは勝新太郎くらいだろうか)。黒澤・三船の両者が出会ったということ自体が(ジョンレノンとポールマッカートニーが出会ったような)二十世紀の奇蹟だったのかも知れない。人生や歴史や世界を左右するのは、才能や努力や運より「出会い」だ。改めてそう思う。
fl:江戸誠一郎、Gt:大萩康司両氏による「Dots and Lines」という新譜アルバムが届く。私の「デジタルバード組曲(フルート&ギター版)」のほかJ.カステレード「4月のソナチネ」、ピアソラ「タンゴの歴史」という3曲の組み合わせ。
デジタルバード組曲は、1982年に書いた…もうかれこれ40年近く前(まだ20代!)の作品。発表当時はデジタルという言葉がまだ珍しく(当時はディジタルと書いていた)「ヘンなタイトル」と後ろ指をさされ、無調全盛の現代音楽の時代に#♭が全くない旋法と変拍子だけで書いたので「きみは頭がおかしいのか?」と非難され、初演し録音して貰ったフルーティスト氏には「これは人間が吹ける音楽ではないよ」と説教された記憶が懐かしい(笑)
ピアノ版でも超難しいのに(よりにもよって)ギター版を作ったのは、超絶技巧で一世を風靡した山下和仁氏との出会いから。ギターパートは「指が複雑骨折します!」とか「7本くらい指がないと弾けません」とか言われたものだが、フルート共々こうしてさらさらと弾いてしまう若い世代の演奏家が出て来るのだから時の流れというのは……(感無量)。
今まで玄関の隅に置いたままだった植物の鉢をデスクの上に置いてみた。
名前が分かるアプリを手に入れたせいで少し植物に愛着が湧いたのがきっかけ(ちなみにこの子たちは、ヤドリフカノキ・アサバソウ・セイヨウキヅタ)だが、こうして毎日眺めていると植物の方も「見られている」と感じるのか、もさもさと茂るようになってきた気がするのが面白い。
むかしから、音楽とかメカの名前を覚えるのは好きだったが、植物の名前だけは苦手だった。零戦・隼・紫電改とかF86F・F104(戦闘機)などはすらすら出て来るのに、花の名前となると薔薇とチューリップが見分けられる程度。
一方、母と妹は全く逆で、道ばたに咲いている花とかテレビでチラッと映った植物でも「あれはXXX」「こっちは○○○」とすらすら出て来る。親子でこうも違うものかと首をかしげるが、まあ、こちらは一生花の名前などとは無縁だろうと思ってきた。
…のだが、最近、PictureThisというアプリを手に入れた。iPhoneに入れて植物や花あるいは樹木をカメラで撮ると、その名前(和名・学名)を教えてくれる。
試しに家の中にある(名前の分からない)鉢植えを撮ってみると、ポトス・アンセリウム・ドラセナスルクロサなどという名前がすらすら出て来る上に、分類・特徴・花言葉・育て方などの説明のほか「水不足で葉が黄ばんでいます」というアドバイスまでくれる。
先日も、京都で花見をしつつ「これは?」とカメラを向けると、サトザクラ・エゾヤマザクラ・オオシマザクラ・モモ…などさらさら出て来て感動。もしかしたら68年の人生でもっとも画期的な知的衝撃?かも知れない。