新宿の鴨
新宿の高層ホテルで束の間ひと休み。天気がいいと遠くの山並みまで望めて東京らしからぬ清々しい景色が広がる。しかし、夜、和食の店に行くもお客はほぼゼロ。一人カウンターで炙り鴨などつついていても、緊急事態宣言下の酒類提供制限でお酒がないので間が持たない。メニューにはノンアルコールビール・ノンアルコールワイン・ノンアルコールハイボール・ノンアルコールカクテルなどが並んでお店の苦労が忍ばれるが、ノンアルコール日本酒はない。銘柄としては月桂冠と零の雫という2種類が存在するそうなのだがメニューにはなく、お店の人は「お米のとぎ汁でもお出ししますか?」と苦笑い。
ありがたいことに来年のコンサートの話などもぼちぼち聞こえてくるのだが、来年「通常モード」に戻っている保証は全くなく、まさに「鬼が笑う」感じがぬぐえない。なにしろ、生まれたときからコロナ禍の子が早2歳になっていて、彼らにとってこの世界はマスクなしでは肺が腐る「腐海」の感覚なのだとか。もしかしたら一生マスクが普通の人生になるのかも知れない…などとは思いたくないが、完全に否定できないのが怖い。
私のような老世代にとっても「人生の最後がこれか」とため息をつくしかない災難だが、「死ぬまでにもう一度、マスクなしで外を歩き(酒を飲み)人と自由に話し音楽を聞き旅をしてみたい」という思いは切実だ。しかし、皿の上の鴨に「明けない夜はない(かも)?」と語りかけても、お酒なしのしらふでは返事もない(笑。