間宮芳生氏のこと
松村禎三・三善晃・広瀬量平氏らと並んでアジア的日本的な素材や情念を現代音楽に組み込み新しい響きを創った日本を代表する作曲家のひとり。
基本的には現代音楽の人なのだが、わらべ歌とかアフリカのリズムとかモダンジャズを曲の中に編み込む独特のセンスが出色だった。
個人的に、弦楽四重奏曲第1番(1963)で弦楽器がコルレーニョでリズムを刻む(アフリカのダンスのような)部分が大好きで、「鳥たちの時代」で引用している。実はこの曲の初演の時(1986年)文化会館のロビーでばったりお会いし、開口一番「あそこ、引用させて貰いました」と言うと、「あ、そうなの」と笑顔で応じてくださったのが最初の出会い。
民族音楽からジャズまでを恐れることなく現代音楽に組み込む…という姿勢にはずいぶん影響を受けた(というより力付けられた)。ヴァイオリン・ピアノ・打楽器とコントラバスのためのソナタ(1966)の完全にジャズバラードな第2楽章、合唱のためのコンポジション第5番「鳥獣戯画」の強烈な声の絵物語、平家琵琶のような情念を紡ぐ無伴奏チェロソナタ…などの作品は今でもピアノの横に楽譜が置いてある。